また、現存ギャンブルにより生じている被害の回復と、新たな被害が生じないための仕組みを講じることを求めます。
1 | カジノ実施法とは、どんな法律ですか? | |
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カジノ実施法は、2016年12月に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」を受けて、2018年7月に成立した正式名称「特定複合観光施設区域整備法」です。刑法上の犯罪である賭博であるカジノ賭博を、一定の条件のもとで合法化するための法律です。 |
1-2 | カジノ実施法には、どんな問題がありますか? | |
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2018年7月成立した「特定複合観光施設区域整備法」には、主に次のような問題があります。 (1)331もの政令委任事項 カジノ規制の具体的内容は、331もの政令委任事項とされ、国会のコントロールが及ばなくなる可能性があります。 (2)特定資金貸付業務の採用 外国人のほか、日本人に対しても、一定の預託金を預入れることによって、カジノ事業者がカジノ利用者に対し賭け金を貸付けることができるようになっており、カジノ依存を助長する可能性があります。 (3)不十分極まりない入場制限等 入場料賦課、入場回数制限等カジノ依存対策が、極めて不十分な内容にとどまっています。 (4)カジノ面積規制の緩和 取りまとめ時には「1万5千平方メートル」とする上限値(絶対値)が記載されていましたが、実施法案ではそれが削除され、面積規制が緩和されました。 (5)カジノ管理委員会への事業者からの採用 カジノ事業者を監督すべきカジノ管理委員会について、カジノ事業者からの採用が否定されておらず、その独立性が担保されていません。 |
2-1 | カジノを合法化すれば、儲かるからいいんじゃないですか? | |
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カジノに関わる事業者の利益や自治体の税収、そして、雇用が増えるということは一時的にはあるかもしれません。しかし、どの程度のプラスの経済効果が上がるのかについては、さまざまな推計がなされていますが、極めて大きな幅があり、結局計算条件を少し変えるだけで、大きく変わりうるものであり、条件しだいということができ、大成功が絶対に約束されているとはいえません。 また、経済効果をいうのであれば、マイナスの経済効果、すなわち、いったいどれだけの方の家計が破たんするのか、カジノ依存対策、犯罪対策、医療費、教育費などのカジノ開業に伴って必然的に必要となる費用、さらには、カジノの開業によって地域の産業から吸い取られる利益などを計算すべきではないでしょうか。これらを無視して、経済効果を推し量るのは無意味なことです。 結局、カジノを合法化しても、そもそも儲かるかどうかは、それこそギャンブルのようなものですし、カジノ規制を緩くすればするほどカジノ事業による利益が大きくなるということは、より多くの人が破たんするように仕向ければ仕向けるほどカジノ事業の利益が大きくなるということになります。すなわち、カジノで儲けようとすれば、多くの人の経済的破たんが必然的に生まれてしまうといえますし、さらにいえば、日本でのカジノ事業を展開するのは海外のカジノ事業者ですから、カジノの利益の多くはカジノ事業者の株主たちに配当されていくことでしょう。 それを許してよいとはとうてい思えません。 |
2-2 | 国営カジノなら国家財政が潤っていいんじゃないですか? | |
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法律上、カジノは「民間事業者が設置、運営をする」ものです。国営カジノではありません。 したがって、カジノ賭博合法化のあかつきには、日本で初めて、完全に民設、民営の常設賭博場が一定の条件のもとで公認され、一定の国庫納付金が予定されていますが、収益の多くは、カジノ事業者、すなわち、海外資本に流れていくことになります。 |
2-3 | カジノが設置されれば、海外からの大規模投資によって我が国が潤うのだから、悪いことではないのではないでしょうか? | |
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「マカオなどでカジノを運営する「メルコリゾーツ&エンターテインメント」のローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は…日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業参入に関して…1兆1千億円…以上の投資をする準備があると述べ」(京都新聞2018年6月14日19時56分配信)、「米ラスベガスで最大規模の収益を誇る「MGMリゾーツ・インターナショナル(MGM)」のアラン・フェルドマン上級副社長も…「大阪のような都市なら…約1兆1千億円…規模の投資になる見込みだ」と語」った(朝日新聞2018年7月20日5時配信)そうです。1兆1000億円とはちょうど100億ドルで、途方もない投資額です。 確かに、初期投資分はIR施設の建設等に宛てられるでしょうから、国内の建設会社等はそのおこぼれに預かることになり、建設分野に関しては、一時的に活況を呈することもありましょう。その額は、投資額に及ぶかもしれません。 しかしながら、カジノ事業者が、1兆1千億円以上の投資をするのは、それを上回る利益が見込まれるからです。前出のローレンス・ホー氏が「日本こそ夢の地」と表現している(週刊東洋経済2018年12月8日号)のはそのためですし、MGMの会長兼最高経営責任者のジム・ムーレン氏も「日本が世界で最も投資収益のいいゲーミング機会であると考えてい」る(ASIA GAMING BRIEF 2019年6月5日配信)ことも、日本カジノからもたらされる彼らの利益が相当なものであることを示唆しています。 カジノ事業者は、1兆1000億円ともいわれる投資額を上回る回収をするのであって、その多くはIRの収益エンジンであるカジノからもたらされます。そして、そのカジノの主な顧客は日本人なのですから、カジノ事業の成功は、すなわち、日本人の資産(まさに、国富といってよいでしょう。)がカジノ事業者に吸い取られ、海外に流出する事態が招来することを意味します。 カジノ事業者が、大規模投資の見返りを回収する結果、我が国の国富が失われるのですから、我が国が潤うということもできないのではないでしょうか。 |
3 | 実際にカジノ賭博場が設置されるまでの流れはどうなっていますか? | |
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カジノ賭博合法化法は、合法的カジノ賭博場設置という大目標と、それに関連する基本的な事項を定めるプログラム法にすぎません。 したがって、今後、カジノ賭博場を実際に設置、運営するために必要な事項を定める法律(実施法)等の整備が別途必要になります。 これらの法律等の整備は、カジノ賭博合法化法が施行された平成28年12月から一年をめどに行なうとされています。 そして、その後、カジノ賭博場誘致を希望する地方自治体等の申請に基づいて、国が認めた場合に、初めてその区域にカジノ賭博場を開設することができることになります。 |
4 | IRとは何ですか? | |
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Integrated Resort の略で、統合型リゾートと訳されることが多いようです。 合法化法上に定義されている「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設」が、まさにIRです。 |
4-1 | カジノというレッテル貼りは不当であって、IRと正しく表現すべきではないですか? | |
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IRとは「特定複合観光施設」のことであり、法律上「会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設」と定義されています。もしここにカジノ施設が設置されないなら、これらはいずれも新たな立法措置なく設置することができるものばかりです。 したがって、IR立法を行なうのはカジノを合法化する(賭博罪の違法性を阻却する)ためであり、これをIRという、一見して意味の分からない横文字で表現するのは、賭博の合法化という本音を覆い隠そうという意図が透けて見え、適切とはいえません。 |
4-2 | カジノはIRのごく一部でしかないのだから、いいんじゃないですか? | |
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確かに、カジノは、IR全体の床面積の3%以下に限定されるそうです。 しかしながら、そうであっても、IRの「大規模な投資を伴う施設の採算性を担保」するだけの「カジノの収益」が必要であるということですから、IRの収益の大部分はカジノからもたらされることが期待されており、カジノなくしてIRは成り立ちません。床面積としては一部かもしれませんが、IRにとって、カジノは必要不可欠なエンジンのようなものです。 逆に、ほんのわずかな面積のカジノが、IR全体の収益を保障するというわけですから、カジノ客からどれだけの上がりを期待しているのか、ということになります。決して、一部だからいいということにはなりません。 |
4-3 | カジノのないIRも考えられるのだから、目くじら立てて、IR法に反対しなくてもいいのではないですか? | |
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我が国で検討されているIR誘致論は、例外なく、カジノを含むものです。 海外の事業者も、「カジノはIRの重要部分だ。ハンドルの無い車が走らないのと同じで、カジノは必要だ」(カジノ世界最大手ラスベガス・サンズのジョージ・タナシェビッチ専務、2018年7月24日、毎日新聞より)などと発言しており、カジノのないIRはもともと想定されていませんから、日本では「IR=カジノ」と考えて差し支えありません。ですから、カジノに反対であれば、IR法そのものに反対する必要があります。 |
5-1 | ギャンブル依存症とは何ですか? | |
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ギャンブル依存症(病的賭博とか、最近では、ギャンブル障害と表現すべきであるとされています。)とは、ギャンブルを渇望し、それをしたいという衝動を抑えることのできないという症状を呈する病気であり、世界保健機関(WHO)においても、精神疾患のひとつとして扱われています。 ギャンブル依存症は、いったん発症すると完治することは難しく、また、「否認の病気」といわれていて、自らそれと自覚することが困難です。(ただし、ギャンブラーズアノニマスなどの自助グループ等の利用をすることにより、ギャンブルをしないで過ごし続けて「回復」の道を歩まれている方もいらっしゃいます。) ギャンブル依存症の方の二大特徴として、「嘘」と「借金」をあげる精神科医もいます。また、認知の歪みを生じ、「負けを取り戻すことがギャンブルの目的」となります(川本泰信医師、日経電子版2018年4月3日)。 2014年には、我が国の成人人口の約5%、約536万人もの人が、2017年には成人人口の約3.6%もの人が、ギャンブル依存を疑われるとの推計結果が公表されました。 |
5-1 | カジノ賭博によってギャンブル依存症になっても自己責任ではないでしょうか? | |
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もっとも厳しいギャンブル規制を行なっている北欧諸国においても、1、2%程度のギャンブル依存症者を生み出し続けていることからすると、 ギャンブル産業が顧客に対しそのサービスを提供する限りギャンブル依存に陥る人が当然に発生するということがいえます。 一定の顧客が必ず病気になるわけですから、それは顧客の努力ではいかんともしがたいものであり、それを顧客の自己責任に帰するのは適切ではありません。 また、ギャンブル産業は、一定の顧客が必ず病気になるサービスを提供して利益を受けているわけですから、そうしたギャンブル産業、そして、それを容認する国や社会が、病気になった方の治療や回復の援助をすることは当然のことです。 |
5-2 | カジノにはまって依存してしまうのは意志が弱い人ではないでしょうか? | |
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ギャンブル依存症は疾病だとされていますし、必ずしも意志の弱い人がなる病気ということでもありません。また、責任感が強い人の方がかえってハマりやすいとの指摘をする人もいます。 カジノを含むギャンブルは、その利用者の意志が強かろうが弱かろうが、ハマってしまって社会生活に破たんを生じてしまう人を必然的に生み出してしまうのですから、その合法化や拡大について慎重に考えなければならないことには変わりありません。 |
5-3 | カジノができても、私は行かないので関係ありませんよ? | |
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さて、絶対に行かないと断言できますでしょうか。たとえば、大阪のカジノ候補地である夢洲は、大阪・梅田から電車で15分もあれば行ける距離にあります。カジノが開設したら、物珍しさもあるでしょうから、多くの人が夢洲を訪れるでしょう。友人などからもお誘いがあるかもしれません。また、日本カジノはIR型ですから、ショッピングや家族でお出かけするにも楽しい場所になります。カジノに行く気はなくとも、夢洲でショッピングをしたついでに、ちょっと「カジノに入ってみようか」などという気にならないと断言できますでしょうか。何気なく入ってみたいと思うのが人情というものではないでしょうか。カジノで行なわれているのは、お金を賭けていることを除けば、ゲームそのものです。ゲームは楽しいものです。何気なく入ったカジノで、何気なくやってみたゲーム(賭け)にハマるということは、絶対にないと言いきれますでしょうか。 また、自分がカジノに行かなくとも、家族や友人は分かりません。日本の成人人口の3〜5%がギャンブル依存を疑われるとされています。カジノ合法化でこれに変化が生じるかどうかは分かりませんが、いずれにせよ、あなたの知っている成人100人のうち数人がカジノにハマってしまうということをイメージしなくてはならないと考えます。そして、そのハマった人が、あなたの家族、友人、職場の同僚、子どもの学校の先生だったなどということは十分に考えられます。カジノは、パチンコなどに比べて、賭け金額に上限がありませんから、あなたの勤務先の社長がハマって、一夜にして会社が潰れるといったことも想像しておく必要があります。望むと望まぬとにかかわらず、現にそうした事態が発生してしまうのです。 他人事にすることは、決してできないと思います。 |
5-4 | ギャンブル依存については、高校生などの若年者に対して、これから、教育、啓発が徹底して行なわれるのだから、カジノが合法化しても心配はないのではないでしょうか? | |
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ギャンブル依存については、ギャンブルがそもそも「負けが約束されているゲーム」であることと合わせて、その病態、そして、回復への道があることなどが、とりわけ若年段階で、繰返し、教育、啓発されることが必要であり、そうした取組みがいっそう強化されるべきです。 一方で、学校現場で、ギャンブル依存について学ぶのは、現実問題としては、特別講義として多くても年一回程度でしょうから、教育、啓発も自ずと限界があります。 また、そもそも、ギャンブル依存に陥った方には「認知の歪み」が生じているといわれています。頭が冷静であるうちは、過去の教育、啓発の効果が期待できるかもしれませんが、熱中して「認知の歪み」が生じた段階では、もはや過去の教育、啓発の効果は期待できなくなっており、ギャンブル依存を抑止することは困難となっているのではないでしょうか。 教育、啓発は非常に大切なことですが、対策としてはそれで十分ということはなく、カジノ合法化によるギャンブル依存の心配はないということにはなりません。 |
5-5 | ギャンブル依存に陥ることがあっても、今後は、ギャンブル依存対策が充実して、医療や相談態勢が整備されるのだから、心配ないのではないでしょうか? | |
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ギャンブル依存対策として、ギャンブル依存者に対する医療や相談態勢が充実することは必要不可欠です。 しかし、ギャンブル依存症は、いまだ分からないことが多く、また、特効薬がなく、治療方法も確立していません。それゆえに、ギャンブル依存症は、難治性があるといわれています(ただし、ギャンブラーズアノニマスなどの自助グループなどを活用するなどして、回復することはできます。)。 さらに、ギャンブル依存に陥っても、治療や回復の現場に登場する者はごくわずかにとどまると言われています。つまり、どんなに医療や相談態勢が充実しても、そこにたどり着くことのできない人が大多数であり、その人たちには必要なケアが届きません。 したがって、ギャンブル依存者に対する医療や福祉が充実しても、それで安心ということにはとうていなりません。 |
5-6 | 自己を律することができないような人のために、なぜ私がカジノに行くのを我慢しなきゃならないんでしょうか? | |
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まず、前提として、カジノは賭博であり犯罪です。場合によっては、逮捕され、刑事裁判にかけられて刑務所に入ることもあります。賭博罪は、確かに被害者なき犯罪であり、誰にも迷惑をかけず、本人さえよければ国や社会があれこれ言うべきではないのではないかとの議論(非犯罪化の議論)もありますが、現時点では、社会的合意として、賭博は原則として違法であり、犯罪です。その点は、覚せい剤の自己使用と異なりません。 その意味では、あなたが、カジノに行くのを我慢しなければならないのは、法律上は、あなたが覚せい剤の自己使用をがまんしなければならないということと大差ないことといえます(なお、日本国内では許されないカジノが合法化されている外国がありますので、あなたはそうした外国に行けばカジノに行くことができます。)。 また、ギャンブル依存の方は、現象としては、自分の力ではギャンブルをすることを止めることができない状態に陥っているのですが、それはあくまで疾病によるものです。そして、ギャンブル依存は、ごくわずかな特別な人が陥るということではなく、どういう人であっても陥る可能性があるものであり、他ならぬあなた自身がギャンブル依存に陥ることも十分にありえます。 それはまさに社会病理現象といえ、それを自己責任の領域で語るのは誤りであり、個人的な好悪や向き不向きのレベルを超えて、社会として規制すべきものであると考えます。 |
6 | シンガポールでは、ギャンブル依存の人が減っていると聞いています。カジノを合法化した方がギャンブル依存対策を講じることができて、いいのではないでしょうか? | |
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シンガポールで、ギャンブル依存の人が本当に減っているかどうかはともかくとして、仮に減っているということができたとしても、それはギャンブル依存対策の結果であって、カジノ合法化したからではありません。 既存ギャンブルによる被害が大量に発生しており、ギャンブル依存問題が社会問題化していることからすれば、その問題を自己責任として放置するのではなく、ギャンブル依存対策は、カジノ合法化の有無とは無関係に、即時無条件に社会全体の責任において講じるべきです。 カジノ合法化とギャンブル依存対策を交換条件とするかのような議論は、その前提から誤っているのではないでしょうか。 |
6 | カジノを合法化しても、パチンコや公営ギャンブルに依存している人が、カジノに移動してくるだけだから、ギャンブル依存の人は増えないのではないでしょうか? | |
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カジノ事業者の主なターゲットは、既存ギャンブルの客というよりは、従来ギャンブルにハマっていなかった層です。カジノ事業者や誘致自治体などが想定しているカジノ売上げをみれば既存ギャンブラーを呼び込むだけでは足りませんし、IRカジノそのものが既存ギャンブルとは無関係の人がふとカジノに立ち寄ることを想定した施設であることからすれば、カジノを通じて新たにギャンブル依存に陥る方が必ず発生します。したがって、カジノ合法化によって、ギャンブル依存の人が増えることは確実です。 |
7 | 多重債務の問題の再燃とは | |
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カジノ賭博場が存在するシンガポールではローンシャーク、韓国ではサチェと呼ばれるヤミ金が跋扈しており、彼らはカジノの賭け金を顧客に貸付けたりしています。 一方、日本では、貸金業法改正等の官民一体となった多重債務対策が功を奏し、多重債務者が激減してきました。 しかし、貸付金の総量規制が及ばない銀行系カードローンの貸出残高が急上昇したことにより、平成28年には自己破産の申立件数も13年ぶりの上昇に転じました。 カジノ賭博場の設置は、顧客がカジノに投ずるための資金需要を生み出し、以上のような傾向に拍車をかけ、多重債務問題が再燃する現実的危険性が高まっています。 |
8 | マネーロンダリングとは何ですか? | |
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マネー・ロンダリング(マネロン)とは、犯罪など違法に得た収益金の流通経路などを隠して正当な手段で得たお金と見せかけることで、一般市場で使っても身元がばれないようにする行為で、資金洗浄や資金浄化とも呼ばれています。 カジノ賭博場におけるマネロンの危険性は度々指摘されており、マカオのカジノ賭博を通じて中国の官僚などが集めた多額の資金や、 北朝鮮が武器や麻薬輸出によって獲得した資金が、マネロンされている疑いがあるとの報道もなされています。 1989年に設置されたアンチ・マネー・ロンダリング等に関する国際協調を推進する金融活動作業部会が策定した国際基準である「FINANCIAL ACTION TASK FORCE」(FATF)勧告は、カジノ事業がマネー・ロンダリングが行なわれやすい業種であるとの認識を前提に、マネー・ロンダリングを防止するための措置を求めています。 |
8-2 | 反社会的勢力を排除することで、クリーンなカジノができるのではないでしょうか? | |
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ヤクザがカジノ事業を直接行うことはありえないでしょうし、カジノ内を彼らが闊歩する光景もないでしょう。彼らは、そんな分かりやすい手法をとってリスクを冒さなくとも、別の手段でカジノの旨味にありつくことが可能だからです。ヤクザは、カジノですった客に対して、貸付けなどができればいいわけで、それはカジノ内外で容易にすることができます。現に、関東の山口組系暴力団幹部が「暴力団に対する規制のルールさえ決めてくれれば、網にかからないやり方を考える」とし、「カジノ開業後は…富裕層に資金の貸し付けや滞在中のサービス提供を一括して行う…ジャンケットの役割を担うことを狙う。「ホテルや航空券を手配してVIP客を呼び、高利で金を貸す。絶対に損しない」」(朝日新聞2018年7月18日付け)と嘯いています。 また、当然のことながら、暴力団構成員等のカジノへの入場を禁止したり、カジノ事業や関連事業等への関与は禁止されています。しかし、これらは禁止されているというだけで、有効な手段によって、これらの入場や関与を事前に排除することができるわけではありません。 また、暴力団員ではない、暴力団の準構成員、暴力団周辺者、海外の犯罪組織構成員、イカサマ師集団等を排除することは、実際上できません。また、暴力団員の指示でギャンブルを行う、いわゆる「打ち子」(パチンコの不正遊戯に関し、組織が「打ち子(バイト)」を利用して摘発を回避していた事例(名古屋地判平成9年5月15日税務訴訟資料225・1446頁)や、暴力団に操られた一般人である「藁人形」のカジノへの関与を排除することも、現実的には不可能であり、反社会的勢力のカジノへの関与を完全に除去することなどできません。 この間、指定暴力団員の数は激減するなど、我が国の暴力団対策は極めて大きな成果をあげる一方で、暴力団員以外の「共生者」を利用した暴力団による資金獲得活動が活発になっているとの指摘もあり、暴力団員属性のない反社会的勢力への対応が現在の課題です。カジノ合法化は、彼らの活躍場所を与えることになり、暴力団対策の成果に水を差してしまうのではないでしょうか。 |
8-3 | 日本カジノでは、ジャンケットが禁止されているので安心ではないですか? | |
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ジャンケットとは、大口のカジノ利用者をカジノ事業者につなぐ役割をする者のことで、具体的には、航空機等の交通手段や宿泊の手配をしたり、場合によっては、賭け金を融通したりして、カジノ利用者をエスコートします。なかには、カジノ利用者の買春のために、女性を手配することもあるようです。この辺の実態については、井川意高氏が、著書「溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」(幻冬舎)において、赤裸々に告白しています。 日本カジノでは、こうしたジャンケットの活動が禁止されるとのことです。しかしながら、ジャンケット活動は、カジノ事業者との関係を公式に結ばなくても、容易に行なえるものです。したがって、非公認のジャンケット活動を抑止することは、事実上不可能でしょう。ジャンケット事業を営む者は、すでに日本国内にもいて、日本人を、マカオや東南アジアのカジノに連れていっているとの話しもあります。 ジャンケットの活動のうち、とりわけ、賭け金の貸付けは、カジノ利用者にとって便宜ですし、また、カジノ事業者にとっても収益拡大につながるわけですから、お目こぼしの対象になりやすいでしょう。そして、そうしたところに、反社会的集団の活躍の土壌が生まれることが懸念されます。 ジャンケット禁止は、全く実効性がないでしょう。 |
9 | 公営ギャンブルやパチンコを放置して、カジノ賭博合法化に反対するのはおかしくないですか? | |
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既存ギャンブルである公営ギャンブルやパチンコによって、すでに多くの方が苦しんでおられます。 私たちは、こういった方々に対する必要かつ適切な支援が社会的に行なわれること、また、こういった問題が生じないような仕組みを講じていくことが必要であると考えています。 |
9 | パチンコ規制をいわずして、カジノにだけ反対するのはおかしいのではない でしょうか? | |
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当会がパチンコについて特段の意見表明をしないのは、当会がカジノ合法化に反対することを一致点にして集っている団体だからです。 一方で、我が国のギャンブル問題の異常さは、そのほとんどがパチンコによってもたらされていることは周知の事実ですので、ご質問のようなお気持ちになられるのも理解することができます。当会に集っている仲間たちにも、パチンコの現状に対して強い憤りをもっている者が多数おります。 もし、パチンコ規制が必要であるとお考えであれば、それをご主張なさるとともに、合法賭博の枠を広げることにつながるカジノ解禁にも反対していただいて、ともに声をあげていこうではありませんか。 |
9-3 | パチンコをなくすためにカジノは合法化すべきではないでしょうか? | |
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パチンコが実質ギャンブルであり、それが放置されていることが、日本のギャンブル問題の中心であることはそのとおりです。ご質問は、そのパチンコの問題を解決するためには、カジノを合法化してパチンコの顧客を奪い取ることによってパチンコ産業を衰退させるべきとのお考えによるものと思われますが、パチンコの被害者を生じてはいけないのと同様に、カジノの被害者も生じてはいけないと考えます。 通称カジノ議連とかつてのパチンコ議連のメンバーの多くがかけもちだったという歴史があります。このことは、パチンコ事業者とカジノ事業者とは、直ちに利害が対立する関係にはないということを意味します。現に、ゲーミング機器メーカーであるセガサミーは日本カジノ参入を見据えてか韓国ですでにカジノ事業に参画しています(ニューズウィーク日本版2018年3月16日付け)し、パチンコホール最大手のマルハンも海外のカジノ関連会社との資本提携を行なうなどしてカジノ運営のノウハウを取得しようとしているとの報道もあります。 パチンコ問題は巨大な利権構造のなかで、長らく放置されてきました。カジノ合法化は新たにカジノ利権を生み出し、カジノが弊害を生じたとしても、カジノの利権構造が弊害の是正を許さない機能を果たす懸念は極めて大きいと思われます。現に、カジノ事業者にパーティー券を購入してもらった政治家の話題(週刊文春2018年7月19日号)がマスコミに登場し、癒着は始まろうとしているというべきです。 また、民間賭博であるカジノを合法化してしまえば、蟻の一穴の例えのとおり、事実上の民間賭博であるパチンコについてもなぜ合法化できないのか、例外を拡大する方向での議論が行なわれる可能性もあります。パチンコは実質賭博である以上、取締りの対象とすべきであって、これを民間賭博として公認するなどということはあってはなりません。 したがって、パチンコ問題の解決のためにカジノを合法化すべきとのお考えには賛成できません。 |
9-4 | ギャンブル依存症を心配するのであれば、まずパチンコを規制すべきではないですか? | |
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我が国のギャンブル依存問題は、すなわち、パチンコ依存問題ですから、ギャンブル依存対策として、パチンコに対して必要な規制を及ぼすのは当然のことです。 しかし、だからといって、カジノを合法化してよいということにはなりません。パチンコ規制とカジノ反対は矛盾しませんから、どちらが先ということではなく、両方同時に追求すればよいものです。 |
9-5 | カジノを作らないことが、一番のギャンブル依存対策だと思うのですが? | |
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気持ちは分からなくはありませんが、不正確だと考えます。 合法カジノが存在しない我が国で現在発生しているギャンブル依存問題は、既存ギャンブル、すなわち、パチンコや公営ギャンブルなどによって生じているものです。したがって、これに対する対策を講じるにあたって、「カジノを作らない」ことは今よりも悪くならないということではあっても、今より良くなることにはつながりません。 したがって、既存ギャンブルによるギャンブル依存対策としては、「カジノを作らない」という原状維持では意味がなく、新たな取組みが必要であることは明らかです。 ただし、合法ギャンブルの拡大を意味するカジノ開設によって、カジノをきっかけにしてギャンブルにはまり込んでいく人が発生することは不可避ですから、カジノ合法化が、今後のギャンブル依存対策にとってマイナス因子になることは明らかです。その意味では、ギャンブル依存対策推進のためには、カジノ合法化は中止すべきであるといえます。 |
10 | カジノ賭博合法化で海外から観光客が増加し、さらには投資が盛んになり、雇用も増え日本の成長戦略に寄与、地方の活性化に寄与するのではないですか? | |
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年間の訪日外国人の数は、平成28年には約2403万人、平成29年には約2869万人に達し、本年は5月までで約1319万人であり、最終的には約4000万人に達する見込みであって、カジノがなくとも毎年順調に増加しています。 そうした人々が我が国に求めているのは、美しくて穏やかな自然、長い時間をかけて育まれてきた文化、そして、そこに生活する人々のおもてなしも含めた風土ではないでしょうか。実際に、外国人向けのアンケートでも、日本観光についてカジノに期待する人はほとんどおらず、カジノ合法化が観光客誘致にどの程度の効果があるのかは不明というほかありません。 日本でのカジノ賭博場展開を計画しているアメリカ等のカジノ賭博事業者によれば、日本版カジノ事業に、数千億円から数兆円もの投資がなされるそうです。 カジノ賭博事業者の計画は、これらの投資額を数年で回収するというものになっています。 彼らは、日本版カジノ賭博における最も期待される顧客は日本人であり、日本人が有している金融資産がターゲットとなっています。 カジノ賭博合法化によって、一時的、部分的に、税収増等の経済効果は生まれる可能性はありますが、一方で、それをはるかに上回る地元民を含む日本人の金融資産の流出、そして、荒廃し尽した地域の姿が残されることが懸念されます。 |
10 | カジノは、外国人観光客を対象とするものだから、反対するのはおかしいのではないですか? | |
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日本カジノは、法律上日本人も入場することが前提となっていますし、各誘致自治体も「客の7〜8割は日本人になると想定してい」(朝日新聞、2018年6月5日)ます。また、およそ7、8割は日本カジノの事業経営を目指している海外カジノ事業者は、外国人よりも日本人を主なターゲットにしています。 現に、マカオカジノ大手「メルコ・インターナショナル」のローレンス・ホー会長は、「私たちは、日本をどのようにして手に入れるか」と発言する(2018年5月15日、アジア国際娯楽店)など日本カジノ市場に大きな期待を寄せており、日本のパチンコ等のギャンブル市場の大きさから日本人がギャンブル好きであるとみられています(朝日新聞、2018年5月15日)。 海外のカジノ事業者のなかには、日本のカジノ市場を「最後の桃源郷」、あるいは、「最後のフロンティア」とまで表現する者もあります。この「桃源郷」では、日本人の金融資産がせっせとカジノ事業者に吸い上げられていくことになります。 |
10-2 | シンガポールは、カジノ合法化によって、外国人観光客が二割も増えたのだから、日本も同じようにして、増やすべきではないでしょうか? | |
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シンガポールは、2010年に、本格的カジノが初めて開設され、2017年には外国人観光客が1740万人(2010年、1164万人)を数え、この間約1.5倍に増えました(アジア経済ニュース)。 ただ、これらの観光客増がカジノ合法化によるものといえるのかは分かりません。 一方、カジノがない日本では、2010年以降、訪日外国人数は、約861万人(2010年)から約3000万人(2018年)と激増しており(日本政府観光局、読売新聞2018年12月18日)、3.4倍になっています。カジノのない日本の魅力のアピールによって、シンガポールの伸び率を遥かにしのぐ外国人観光客の増加を勝ち取っているのですから、わざわざ弊害の多いカジノ合法化をする合理性は認められません。 |
10-3 | マカオは、カジノの税収のおかげで、市民も企業も潤っていると聞きました。大阪などでも、そうなればうれしいのですが? | |
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マカオのカジノの売上げは、今や世界一で、群を抜いています。 税率は低く抑えられており、市の歳入も大幅な黒字です。 しかし、一方で、カジノ近辺では風俗産業が盛んであり(「マカオ視察報告2007年9月」参照)、カジノにまつわる犯罪も多発しています。 また、マカオのゲーミング税は、市の税収の86%を占めるそうです(2017年実績)。こうなると、マカオは、もはやギャンブル産業から抜け出すことは不可能でしょう。マカオは、まさに「ギャンブル依存」都市といえると思います。そうした道を目指すことが適切なまちづくりとは思えません。 |
11 | 世界ではすでに約120か国でカジノ賭博が合法化されているそうですが、日本ではどうして問題なのですか? | |
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多くの国でカジノ賭博場が合法的に設置されているのはたしかです。 しかし、その実情はさまざまで、欧州ではリゾート地に併設された小型のカジノが一般的ですし、北欧では公営ギャンブルとしてかなりの厳格な規制下においているものが多く、 日本で想定されている民間のIR型カジノ賭博場が世界中で支持されているわけではありません。 そもそも、IR型カジノ賭博場は、宿泊施設、飲食施設、会議場、遊園地等のさまざまな 施設の複合体の一角に設置されることになります。このことは、家族で出かけていく先に合法的賭博場が設置されているということを意味しており、 子どもも含む国民において、賭博に対する抵抗感を喪失させてしまう効果を発揮してしまうことが懸念されます。 |
12 | ギャンブル依存症対策を推進するためにも、カジノ賭博合法化を推進すべきではないのですか? | |
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ギャンブル依存対策は、我が国のギャンブル被害の実情からすれば、カジノ賭博合法化の適否とは無関係に、即時取組むべき問題です。 我が国で想定されているカジノ賭博は、これまでギャンブルにはまってこなかった層を顧客とすることを想定しています。 そうであれば、カジノ賭博が合法化された場合、カジノ賭博をきっかけにしてギャンブルにはまり込み、ギャンブル依存状態に陥っていく人が新たに生じることは容易に想像できます。 そういった方々の犠牲のもとに、ギャンブル依存対策を推進するというのは根本的に誤っています。 |
13 | 世論の動向はどうですか? | |
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2016年11月30日、カジノ賭博合法化法案が突如として審議入りした後、新聞各紙は、 例外なく、同法案に対する反対、あるいは、慎重との社説を掲げ、行なわれた各種世論調査においても、反対意見が賛成意見を大幅に上回っていました。 こうした傾向は、カジノ賭博合法化法が成立した12月15日以降も変わりなく、共同通信の世論調査でも反対意見が69%に達しています。 |
13 | 風俗環境の悪化とは、どういうことでしょうか? | |
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カジノが合法化された場合、カジノ周辺地域の風俗環境の悪化が懸念されます。 「飲む、打つ、買う」という昔からの言葉が示すように、ギャンブラーである男性にとって、残念ながら、賭博と「女性」はセットで語られてきました。そうした歴史からしても、カジノの周囲では、セックスを売り物にした風俗営業が広がる可能性があります。 カジノ依存都市マカオでは、ギャンブラーを客引きする女性たちの姿が目立っており(カジノ問題を考える女たちの会「マカオ視察報告2007年9月」)、「マカオ治安警察局は・・・大型カジノ・・・が建ち並ぶコタイ地区の・・・取り締まりで・・・違法売春と違法両替・・・合計17人・・・の身柄を拘束し」たとの報道もあります(2018年4月5日、マカオ新聞)。 対岸の火事と見過ごすことはできないと考えます。 |
13-2 | カジノの周りでは質屋が流行ると聞いたのですが? | |
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韓国唯一の自国民向けカジノである江原(カンウォン)ランドのある街には、質屋が並び、そこにはカジノ客が質入れしたと思われる質草の品が並んでいます。また、乗ってきた自動車も質入れしてしまう人もいて、その結果数千人に及ぶカジノホームレスが発生しました(動画「カジノの町は今」)。 マカオには、「押」と呼ばれる「質屋」が無数に存在します((DIAMOND online「カジノ大盛況の裏で進むマカオの街並みと伝統産業の破壊」、姫田小夏氏)し、カンボジアのカジノタウンであるポイペトにも、質屋が並んでいるとの報道もあります。また、シンガポールにも質屋街があってカジノ客の利用もあるようです。 IR施設内での質屋営業はできませんが、施設の近くに質屋が並ぶことは十分に考えられますし、質屋営業はカジノ依存を助長することにつながるでしょう。 |
14 | 闇(違法)カジノを撲滅するためにも、合法カジノを設置した方がいいのではないでしょうか? | |
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そもそも、合法カジノの設置が違法カジノの減少につながるということに、論理必然関係にあるかは疑問です。 世界一のカジノ大国であるマカオでも、違法カジノはなくなっていません(マカオ新聞2019年2月5日)。 かえって、合法カジノを体験した者の賭博に対する抵抗感を失わせ、違法カジノに入ることの躊躇を感じなくさせてしまうのではないでしょうか。バドミントンの田児選手も「僕は'11年に行った海外遠征でカジノ遊びを覚え、その後は遠征のたびに各国で勝負する生活を送ってきました。そのあたりから、おかしくなっていったのかもしれない。」(週刊現代2016年6月1日)と語っています。 カジノは、民間で実施可能な小規模ゲーム(トランプ,サイコロ,ルーレットなど)から成り立っています。大規模な施設がなくても実施可能であるため、暴力団等の反社会的勢力が各地で違法カジノを開くことは容易であり、もちろん見つかったら摘発されますが、これら容易に開帳できるカジノに、賭博に対する抵抗心のマヒした一般人が入場するようになってしまうことが懸念されます。実際、闇カジノの社長も、「ギャンブルを避けてきた人が、合法となって覚える。そんなとき、『お、ここにもあるんか』ってうちに流れてきたら。政治家様々やね」(朝日新聞、2018年7月5日8時32分配信)などと話しています。 |
15-1 | カジノ事業者には、厳格な免許制が敷かれるから、安心できるのではないでしょうか? | |
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たしかに、我が国のカジノ事業は免許制度を採用しており(カジノ実施法39条)、不正申告や免許後の暴力団員の関与などが発覚した場合には免許の取消し等ができることになっています(49条)。 しかし、多数の雇用者や関連事業者が存在する中で、免許の取消しという厳格な処分を、現実に下すことができるのでしょうか。免許の取消しは、カジノ管理委員会で検討されることになりましょうが、カジノ管理委員会事務局職員がカジノ事業者から採用がされることは否定されないとのことです(朝日新聞、2018年6月9日5時配信)。厳格な免許制が機能するかどうか、疑問です。 |
15-2 | カジノ事業者が違法行為をした場合には、カジノ管理委員会によって免許が取消されるのだから、心配ないのではないでしょうか? | |
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カジノの免許の取消しは、カジノ事業の廃業を意味しますので、その社会的影響が大きいことからしても、また、カジノ管理委員会がカジノ事業を推進する役割も担っていることからしても、カジノ管理委員会がそのような厳しい処分をすることは期待できません。カジノ管理委員会の事務局に、カジノ誘致を支援する監査法人から三名が出向しており(朝日新聞、2020年1月31日20時36分配信)、彼らに厳格な対応を求めるのはないものねだりです。 |
15-3 | いろいろ懸念はありますが、とりあえずやってみて、弊害が大きければ、その時点で規制を強化したりすればよいのではないでしょうか? | |
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カジノ規制の内容は、カジノ客の安全の要請(消費者保護の要請)と、カジノ事業者の利益確保の要請との相関関係で決まります。我が国では、現状、後者の要請の力が前者を圧倒しています。現に、カジノ面積規制が、IR推進会議での議論後、事業者等の批判にさらされて、大きく後退したことは、耳に新しいことです。 いったん設置してしまった後に弊害が生じた時点で規制をかけるというのは、その時点までの犠牲者の発生を容認する発想ですし、また、そもそも事業者の利益確保の要請が非常に強いことから、新たな規制をかけること自体極めて困難なことではないでしょうか。 |
15-4 | カジノ規制がうまくいっているシンガポールをモデルにしたのですから、カジノへののめり込み対策も心配ないのではないですか? | |
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我が国のカジノ合法化の過程では、シンガポールでは外国人観光客が増えた、シンガポールではかえってギャンブル依存者が減ったなどとして、シンガポールではうまくいっていることを前提に議論がされていたので、シンガポールをモデルにしているといって過言ではありません。 しかしながら、我が国のカジノ規制は、入場料ではシンガポールの約8000円(シンガポールドル100ドル)に及ばない6000円とされ、また、シンガポールで導入されている自己破産者、生活保護受給者等の低所得者の入場規制は議論にものぼりませんでした。つまり、「世界最高水準」どころか、シンガポールのカジノ規制にも及ばないものになっています。 シンガポールでもカジノへののめり込みによるギャンブル依存者の発生を抑止しえていません。とすれば、シンガポールレベルのカジノ規制さえ考えていない我が国のカジノでは、カジノへののめり込みによって、さらに多くのギャンブル依存被害を生み出すことは必定です。 |
16 | カジノは金持ちしか行かないから、庶民とは無関係ではないでしょうか? | |
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カジノは、決して、一部の金持ちしか入場できないわけではありません。現在想定されている入場料は6000円程度であり、庶民でも入場できます。 庶民でも、カジノ外で借金をして賭けることができますし、多少なりともお金を持っていれば、一夜にしてその有り金の全部すってしまうことも可能です。また、定年退職された方が、そのまとまったお金を、一夜にして全て失うこともできますし、流動資産がなくとも、自宅があれば「特定資金貸付業務」による貸付けを受けて賭けをすることで、一夜にして自宅を失うことも可能です。その意味では、カジノによって、あなたや、あなたの子ども、親、兄弟姉妹、学校の先生、職場の同僚といった大切な方々が、そういった被害に遭うことは普通に想定できます。また、会社の社長が一夜にして一文無しになって、会社が倒産してしまうこともあるでしょう。 以上のように、カジノは、庶民とは無関係とはいえませんし、また、金持ちなら財産を一切合切失ってもいいということにもならないと考えます。 |
16-2 | カジノは、ドレスコードのある「紳士淑女の社交場」であり、庶民には関係ないのはないですか? | |
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我が国のカジノのドレスコードの定めについては法律上明らかではありませんし、常識的な恰好であれば、入場を断られるということは考えにくいでしょう。現に、シンガポールでもマカオでも「Tシャツ短パンにサンダル履きは珍しくな」く、マカオでは、「ホテルの“スリッパ履き”という姿まで」見られるようです(DIAMOND online「カジノ大盛況の裏で進むマカオの街並みと伝統産業の破壊」、姫田小夏氏)。 つまり、ほとんどの市民の入場は可能であり、庶民も簡単に入れる賭博場といえます。 |
17 | 特定資金貸付業務とは何ですか? | |
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カジノ事業者が、外国人のほか一定の金額を預託した日本人等に対し、その預託額を超えるカジノ賭け金の貸付けをすることができるとされています。 ギャンブルは、金を借りてまでするものではないし、させてはいけないものであり、既存ギャンブルでは当然認められていませんでした。 しかも、この貸付けには、過剰与信防止のための貸金業法上の総量規制(貸付総額の上限を年収の3分の1とするもの)の適用がなく、また、貸付額の上限の定めもありません。 英国で依存症を研究するノッティンガム・トレント大のマーク・グリフィス教授が「(日本の特定資金貸付業務は)東欧でもカジノの隣に金を貸す店があり、依存症増加など社会問題を招くまずい例だ」と指摘する(東京新聞、2018年8月6日)とおり、賭け金の貸付け(しかも、カジノ事業者自身による貸付け)は、カジノ依存を助長するものであり、また、カジノ利用者の有する資産の一切を短時間にて掠め盗ることを可能にするものでもあり、非常に危険な制度です。 |
17-2 | ハイローラーが、大金を賭けるために現金を持ち歩くことは、現実的ではないから、貸付けを認めるしかないのではないでしょうか?アタッシュケースにも入りませんよ? | |
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仮に現金を持ち歩くことが現実的でないとしても、賭け金を事前にカジノ事業者に預け入れることができるシステムを採用すればよいだけの話しであり、そのことをもって、預託金額を超える貸付けを認める理由にはなりません。 |
17-3 | カジノ事業者による貸付けができるというのは、世界的には常識ではないでしょうか? | |
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そんなことはありません。 「1960年にギャンブルをほぼ全面合法化し、選挙結果から王室の赤ちゃんの名前まで賭け事の対象とする英国で」も、賭け事目的の融資は禁止されています(東京新聞2018年8月6日付け)。また、オーストラリア(クイーンズランド州)でも、「カジノ施設におけるいかなる与信行為も認められてい」ません(カジノ管理法47、平成26年度内閣官房委託調査「特定複合観光施設区域に関する海外事例調査報告書」(平成27年3月有限責任監査法人トーマツ)89頁)。 以上のとおり、カジノと貸付けは、必ずしもセットではありませんし、決して世界的な常識ともいえません。カジノ事業者の貸付けは、その危険性からすれば、絶対に導入すべきものではありません。 |
17-4 | カジノからの貸付けは、富裕層を対象とするものだから、問題ないんじゃないですか? | |
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富裕層の概念があいまいであることはさておき、富裕層もそうでない層も、ギャンブル依存症を発症すること、また、カジノへののめり込んだ場合にいろいろな問題を生じることには、変わりません。現に、カジノに約105億円をつぎ込んで巨額横領事件を引き起こした大王製紙元役員は富裕層でしたし、ラスベガスで起きた銃乱射事件の犯人も資産家であったことが分かっています。 カジノ事業者による賭け金の貸付けは、富裕層であれあそうでない層であれ、その者が保有する資産の評価額いっぱいまで貸し込むことによって、極めて短時間でその資産の全てを、カジノ事業者が奪い去っていくことを可能にするものであり、富裕層を対象とするものだからといって許されるものではなく、むしろ富裕層こそその主なターゲットとされる危険が高いのですから、逆に問題が大きいのではないでしょうか。 |
19 | 外国人の母国法における賭博罪の適用はどうなるのでしょうか? | |
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賭博を犯罪とするかどうか、するとして、どの範囲の人を犯罪と扱うかについては、各国の刑事法典で個別に定められています。 たとえば、日本の刑法では賭博を犯罪としています(刑法185条以下)が、その適用は、日本国内での賭博に限定されています。その結果、日本人が外国で賭博をしても日本刑法では賭博罪になりません。逆に、日本国内で賭博をする限り、外国人であっても、賭博罪が成立します。このように、刑事法典の犯罪の適用範囲について国内に限定する考え方を属地主義といいます。 一方、各国の刑事法典における賭博罪については、属人主義を採用するものもあります。属人主義とは、その国の国籍を有する限り、世界中どこであってもその国の刑事法典の犯罪が成立するという考え方で、たとえば、韓国における常習賭博罪がその例になります。つまり、韓国人は、韓国内はもちろんですが外国であっても常習賭博を行なえば常習賭博罪が成立するということになります。東京ヤクルトスワローズでも活躍したイムチャンヨン投手が、マカオで巨額の賭博をしたことで、韓国刑法上の犯罪を犯したとして摘発された(中央日報、2015年11月26日)のは、まさに、韓国の常習賭博罪の属人主義ゆえのことです。 とすれば、韓国人の入場については、カジノ事業者は、常習賭博罪になりそうな場合には断らなければ、韓国刑法上の犯罪の成立を幇助(共犯)することになるのではないかとの疑問が残ります。 韓国に限らず、外国のなかには、賭博罪について属人主義を採用する国もあります。その場合には、日本カジノが真にクリーンなものであることを自負するなら、その国の国籍を有する人については、カジノへの入場を断る必要があるように思われます。 現在、この点に関する手当てを行なう予定なのかどうかも明らかにされていません。 |
20 | カジノの勝ち金の課税はどうなるとされていますか? | |
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カジノの勝ち金は、「営利を目的とする継続的行為から生じたものに該当せず、一時的、偶発的な所得と考えられることから、一時所得として課税の対象とな」るとされています(2018年5月30日、衆議院内閣委員会、国税庁山名規雄課税部長)。 カジノ勝ち金の把握は困難であるとする向きもありますが、カジノでの脱税を防止するために、全ての勝負の賭け金と勝敗をIDカードに記録するなど、デジタル技術を駆使すればよいだけのことです。もちろん、そんな管理されたバクチなど誰が打つというのか、そんなカジノなら人が来ないという人もいるかもしれませんが、容易に防ぐことのできる脱税防止措置を採らないということになれば、国は、カジノ事業者の利益のために、脱税を容認したといわれても仕方ないでしょう。 競馬など公営ギャンブルやパチンコにも同じことがいえます。国税は、ギャンブル事業者への忖度を止め、脱税を許さないための適切な対応をすべきではないでしょうか。 |
21 | インターネット回線を通じたオンラインカジノは合法で流行っているのだから、ランドカジノを違法にしておく理由はないと思いますが? | |
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海外のサーバーにアクセスするオンラインカジノは違法でないという方がいらっしゃいますが、オンラインカジノも賭博罪に該当しますし、摘発される可能性がありますので、インターネット上のオンラインカジノ広告には騙されないようにしてください。 オンラインカジノは我が国の捜査権の総力をあげて摘発すべきですし、もしハマっている方がいらっしゃったら、(賭博罪の適用の可否はともかくとして)何とかして回復の道につなげる必要があるでしょう。 オンラインカジノが流行っていることが、カジノ合法化の理由にならないことは当然のことです。 |
22 | MICEは世界的に成長産業であり、その意味でも、カジノを含むIRは成長戦略のひとつとして位置づけることができるのではないでしょうか? | |
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2017年に開催された大規模国際会議上位20位(欧州等の域内会議を除く。)において、カジノ併設の会議場は2回所のみでした。そもそも、展示場と一体的に運営されているカジノがあるのはマカオのみであり、MICEの重要性を強調しても、だからといってカジノを合法化すべきとはなりません |